京都府福知山市の映画館。ラインナップが少し不思議な映画館。

ご家族でお楽しみいただける娯楽作と、映画プロデューサーも兼ねる支配人が
選りすぐった硬派な作品を上映しています。

連載:20世紀の少年少女へ(2)

テーマ:◉ 映 画 情 報【連載】
URASAWA -自己の探求と飛躍-

「MONSTER」から顕著になったのが、「画」の巧さである。
ここでいう「画」とは所謂「絵」とは違う。画面構図や画面の切り取り方である。特に顔を描くのが巧くなった。初期の絵からもわかるが、元々浦沢直樹は大友克洋(AKIRA)フォロワーであり、デッサン力の非常に高い漫画家である。途中までは、その影響が構図や絵に色濃く出ていたが、「MONSTER」以降の作品は完全にその庇護のもとを離れ、独自の視点で「画」を描いている。



浦沢直樹の「画」の巧さとは
「顔」を描くのが巧くなった。つまり、「気配」を描くのが巧いのである。「MONSTER」において登場人物の内面の深化に伴い、浦沢直樹の「画」も変化していったと言えるのだろうが、特に際立って現れているのが女性の登場人物である。

浦沢直樹の描くヒロインというのはというのは芯が強く、明るい。だが、周りのあらゆる状況が痛々しいほどにヒロインを苦しめる。これがもっとも浦沢直樹の得意とするストーリー構造である。「MONSTER」では、一見普通の人だが何か裏がある、という含みを持ったキャラクターばかりが登場する。浦沢直樹はその人物の顔に映る「気配」を描くようになった。そして、悲劇に翻弄されるヒロインは、今までの作品よりもはるかに美しく、そして内面までを表情に描くようになった。この飛躍に、浦沢直樹のオリジナリティの確立を見ることができる。



浦沢直樹の描く女性とフィルムノワールの影響

女性の描きかたや、その「残酷さ」というのは、漫画界で右に出る物はいないと言える。それは、映画と文学への接近によるものではないかと考えられる。特に、フィルムノワールへの接近が顕著である事は間違いない。フィルムノワールとは主に昔のアメリカの犯罪映画の事であるが、フィルムノワール映画には必ずと言っていいほど、男を堕落させる「ファム・ファタール」(運命の女、危険な女)が登場するのだが、混沌・猥雑・退廃的な映画構造(登場人物相互間での裏切りや、無慈悲な仕打ち、支配欲などからくる殺人、主人公の破滅)は、まさに現在の浦沢直樹の目指すイメージにピタリと収まる。

「MONSTER」は、浦沢直樹にとって自他ともに認める記念碑的な作品になった訳だが、そういった完成度の高い作品を作り上げた後というのは、次回作を作るのが難しいものである。

だが、浦沢直樹は「20世紀少年」の連載によって新たな挑戦を始めるのである。

                                  (3)へつづく




20世紀少年 第1章
11月1日(土)より上映

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